こんにちは。コンサルタントTです。

先日、日本のガールズメタルバンド、LOVEBITESのライブに参戦してきました。前から感じていたのですが、LOVEBITESのライブ会場には40歳から70歳くらいの男性、いわゆる「昭和おじさん」で溢れかえっています。
そして、会場内のトイレは男性トイレは長蛇の列、女性トイレはガラガラという異常な状況。
つまり、年齢層ではいわゆる「シニア」、男女比では「男性」が圧倒的に多い。

今回は、LOVEBITESが何故、こうした特定の「昭和おじさん」マーケットに刺さっているかを考えてみたいと思います。

まず考えられるのが、LOVEBITESの音楽「メタル」マーケットの高齢化です。
ここで少し、この「メタル」というジャンルについてまとめると、「メタル」は「ヘビィメタル」という音楽ジャンルで、これは「ハードロック」というジャンルとほぼ同じですが、「ハードロック」よりも、よりラウドで激しいものが「ヘビィメタル」ではないかと思われます。

「ヘビィメタル」の代表的バンドというと以下のようです。
アイアン・メイデン
ジューダス・プリースト

スコーピオンズ
AC/DC
ラッシュ
ハロウィン

さらには
ヴァン・ヘイレン
ホワイトスネイク
ドリーム・シアター
メタリカ
メガデス
ガンズ・アンド・ローゼズ

などがビッグネームとなりますね。
(私が知らないヘビィメタルバンドももっとたくさんあると思いますが。)

参考までに、ハードロックという同類のジャンルでは、以下のようなバンドとなります。
ディープ・パープル
レインボー
レッドツェッペリン

こうしたバンドが活躍した時代は1980年から1990年代ですので、ピークは今から30年から40年前になります。(ハードロックは1970年から)
従って、当時、若者としてヘビィメタルを聴いてきた世代は、現在40歳以上と高齢化しているのではないかと推測されます。

ただ、ここで驚くべきは、こうしたファンは、当時聴いていた、というレベルではなく、「今でもロックやメタルを音楽ジャンルとして愛し続けている」という人が一定数いるという事実です。

この一つの理由として、上記のうち、ほとんどのバンドが再結成も含めて、現在でも活動を続けているということが挙げられます。

つい先日も1985年から活動を続けているドイツのヘビィメタルバンド「ハロウィン」が武道館でライブを開催して、熱烈なファンが盛り上がっていました。
また、こうしたヘビィメタルをテーマにしたフェスも国内で
PUNKSPRING
LOUD PARK
Knotfest
などが毎年行われており、一定の集客をあげています。

また、こうしたフェスに参戦する観客は、黒Tシャツ、革ジャン、ブーツなど、固定されたファッション文化を形成していることも特徴です。
つまりヘビィメタルやハードロックというジャンルは「アーティストもファンも高齢化しているが、いまだに盛り上がっている」という事実です。

さて、振り返って、LOVEBITESの奏でる音楽は、ツインギターを中心にしたヘビィメタル、ハードロック、ラウドロックです。
このヘビィメタルやハードロックのマーケットは今でも健在であり、その中心は若者ではなく40歳以上のシニアマーケットであるということが、まずライブ会場でシニアが多い大きな理由となります。

そして、さらにその傾向に拍車をかけているのが、日本人全体の高齢化です。
日本人の中位人口(人口全体を二等分する境界点)を調べてみると、
1995年 39.7歳
2005年 43.3歳
2015年 46.7歳
2025年 50.8歳(予想)

つまり、少子化の影響で、日本人全体の中でシニア層とその中で一定の割合を占めるヘビィメタルやハードロックを愛するマーケット人口は全体比では増えているという事実です。

ちょっと複雑な気もしますが、これが日本の現実です。

また、何故、圧倒的に男性が多いのか、という疑問についても、ヘビィメタルやハードロックマーケットの男女比がそもそも8:1、場合によっては9:1と、男性が圧倒的に多いからという理由かと思います。

ヘビィメタルに男性が多いのは、先程の黒を基調として、ファッションや人差し指と小指のみを上に上げるポーズに代表される、若干不良っぽい雰囲気が、女性より、むしろ男性が魅力を感じるから(要は悪ぶりたい)なんでしょうか。
これは女性側に意見を聞いてみたいところです。

ここでは、こうしたヘビィメタルやハードロックが好きな40歳以上のシニアマーケットを「ロック系昭和おじさん」と呼ぶことにします。

次に、何故、LOVEBITESの音楽やライブは、この「ロック系昭和おじさん」のハートにに刺さるのかを考えてみたいと思います。

これは、LOVEBITESのバンドや音楽の特徴から次の4つが挙げられます。
1. メンバー全員が壮絶テクニックを持っている
2. ツインリードギターの編成でギターソロが長い
3. 楽曲によってはロックとクラッシックの融合が楽しめる
4. メンバーが全員、美しい女性でありアイドル的な側面もある

1. メンバー全員が壮絶テクニックを持っている
まず、LOVEBITESの、どちらかというと「硬派」の音楽は、今まで欧米のヘビィメタルやロックを聴いてきた「ロック系昭和おじさん」にとっては非常に魅力的に聞こえます。
「ロック系昭和おじさん」の中には、その人生でアマチュアバンドを組んできた人も多いと思います。特にバンドブームの時に楽器を始めた人も結構いるのでは。
そうした少し楽器をかじっている「ロック系昭和おじさん」に対して、LOVEBITESの超絶演奏テクニックは痺れるものがあります。
私もギターを長年弾いていますが、LOVEBITESのギターのmiyakoさんやmidoriさんのテクニックはコピーできないくらい速弾きで高度なフレーズです。

2. ツインリードギターの編成でギターソロが長い
「ロック系昭和おじさん」としては、最近の売れているバンドの曲になぜギターソロがないのか理解できません。過去のロックの楽曲は、もちろんポップスの楽曲でさえ、ボーカルパートの間には、ほとんどの場合、素晴らしいギターソロがあり、逆にそれが楽曲の魅力を引き立たせていました。
例えば、有名なところでは、あのマイケルジャクソンの曲でBeat Itの間奏のエドワード・ヴァン・ヘイレンの超絶ギターソロは最高にカッコよかった。
こうした最近のギターソロを省く風潮に対して、LOVEBITESの楽曲はこれでもかという長いギターソロが必ず出てきます。しかもそれがいずれも速弾きでものすごい!
「ロック系昭和おじさん」が待っていたのはこういうギターソロなんです。

3. 楽曲によってはロックとクラッシックの融合が楽しめる
以前はプログレッシブロックというジャンルがあり、ロックにクラッシックを融合させて壮大な組曲のような音楽を聴かせてくれるバンドがおりました。(今でもいるとは思いますが)
ヘビィメタルのバンドでもメタリカがサンフランシスコ交響楽団と一緒にライブを演奏したり、ずっと前では、あのディープ・パープルもロイヤル・フィルハーモニックとライブをしていました。
私の好きなパープルやレインボーの楽曲の中にはクラッシックのフレーズを盛り込んだものも多く、レインボーのDifficult to Cureはベートーヴェンの「第9」をロック風にアレンジしたものです。
メタルの超絶ギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンもクラッシックとメタルを融合させた演奏をしていることで有名です。
日本のメタルバンド、X JapanのArt of Lifeなどに代表される、いくつかの楽曲もYoshikiのクラッシックの影響でクラシックからのフレーズを多数取り込んでいます。
さてLOVEBITESの楽曲を作るmiyakoさんやmahoさんはクラシックにも造詣が深いようで、曲の中でラフマニノフの交響曲をモチーフにしたUNDER THE RED SKYなどクラシックの楽曲をとりこんだ、かなり構成の難しい曲も多くあります。
ある意味、プログレッシブロックと言ってもいいくらい、構成が複雑。今、こんな曲が作れて、生で演奏できるのは、日本ではLOVEBITESくらいしかいないのではないでしょうか。
「ロック系昭和おじさん」にはこうしたクラシックとロックを融合した壮大なサウンドもハートに刺さるのです。

4. メンバーが全員、美しい女性でありアイドル的な側面もある
もう一つ大事な視点があります。LOVEBITESのメンバーが年齢的に30歳前後でそこそこ美しく、いわゆるアイドル的な目線でも十分楽しめることです。このアイドルとロックを融合したコンセプトで代表的なバンドは実は「ベビーメタル」なのです。
「ベビーメタル」のファン層もLOVEBITESと同じく「ロック系昭和おじさん」が圧倒的に多いと聞きます。「ロック系昭和おじさん」にとって、LOVEBITESのような美しく可愛い女性たちがステージできらびやかな衣装を着て、おみ足を出している(失礼)ところは、やはり一つの集客につながる魅力にはなっていますね。
ライブの曲の合間にもアイドルを呼ぶような声かけをする男性ファンもよくいることから、やはりガールズバンドというのは、女性よりも男性ファンを増やす要因なのではと思います。かくいう私もその雰囲気は嫌いではないです。

ここまでLOVEBITESの音楽のどの部分が「ロック系昭和おじさん」に刺さるのか、ご理解いただけたと思います。

LOVEBITESは今のところ、あえて硬派のヘビィメタル路線を貫いて「ロック系昭和おじさん」マーケットをしっかり掴んでいるので、このマーケットがあるうちは、このままで良いような気もしますが、最後に、僭越ながら「ロック系昭和おじさん」以外のファンを増やすにはどうしたらよいかを書いてみます。

それをLOVEBITESの本人やファンたちが望んでいるかどうかはわかりませんが、「ロック系昭和おじさん」以外のマーケット、具体的には、若者と女性に届くにはどのような対策をしたらよいかを以下に挙げてみました。
1. SNSでバズらせる
2. アニメとのタイアップ
3. ヘビィメタル以外のジャンルを取り入れたポップな楽曲を作る
4. 最高のバラードをシングルヒットさせる
5. 女性向けのオピニオンリードを行う

1. SNSでバズらせる
現在Z世代のSNS利用率は95%と言われています。メディア別では以下のようです。
1位 Instagram
2位 YouTube
3位 TikTok

音楽的なバズリとしては、TikTokで振り付けと一緒に特徴的なフレーズを出すのがバズるパターンのようですね。こうしたZ世代向けのSNSマーケティングを何か仕組めれば、LOVEBITESの知名度や一部の楽曲の知名度は上がる可能性があります。たぶんキャッチーなメロであれば、音楽ジャンルは問わないと思うので、ヘビィメタでもいいのではないでしょうか。

2. アニメとのタイアップ
先日もワンピースのADOやスラムダンクの10-FEETはアニメの効果もあって楽曲の知名度とセールスが、国内のみならず世界中で売れました。LOVEBITESも実は押井守監督のアニメ「ぶらどらぶ」のオープニング主題歌「Winds Of Transylvania」という楽曲を2020年に出したのですが、こうしたアニメとのタイアップが続いていけば、アニメを見ている若いファン層には一定の知名度と人気は出る可能性があります。

3. ヘビィメタル以外のジャンルを取り入れたポップな楽曲を作る
少し前では、あのヴァン・ヘイレンも中期後期にはシンセを取り入れた「Jump」のようなポップなナンバーも出していました。もともとバンドとしての演奏は安定しているので、こうした新しいジャンルやエッセンスを入れて楽曲を作ると、結構、一般マーケットにハマる場合があります。

4. 最高のバラードをシングルヒットさせる
昔、あのゴリゴリのロックバンドKISSは、早いうちからドラムのピーター・クリスがピアノやアコギで歌う「ベス」「ハード・ラック・ウーマン」のバラード系シングルをヒットさせていました。
あのガンズもアクセルがピアノで歌うノーヴェンバー・レインなどのバラード楽曲は、必ずライブでもセットリストに入っていますよね。ヘビィメタル、ハードロックのバンドでアルバムに数曲バラードを作っているケースは結構多いと思います。
X Japanなどはヘビィな曲とEndless Rainなどのバラード曲を当初からバランス良くリリースして、人気を博していました。LOVEBITESもasamiさんという素晴らしい歌唱力を持ったヴォーカリストいるのだから、アルバムにバラード曲を何曲か入れて、良い曲があればシングルカットすれば、「ロック系昭和おじさん」はもちろん、一般にももっと人気がでると思います。

5. 女性向けのオピニオンリードを行う
LOVEBITESのメンバーと同じくらいの年齢で、日本で有名なガールズバンドSCANDALのファンは男女比率が同じくらいで、若い年齢層も多いと聞きます。もちろん楽曲自体もポップな曲も多く、女性向けの側面もあるのですが、メンバーが結構同じように綺麗な人が多いため、同年代の女性に対してファッションリーダー、オピニオンリーダー的な立ち位置でラジオなどの番組で話したりしています。LOVEBITESメンバーの一人一人のこうした同世代のガールズに対しての発信などで、同世代の女性ファンが付く可能性があると思います。

以上、最後は感想、妄想のような話になってしまいましたが、「ロック系昭和おじさん」の一人である私にとっては、LOVEBITESの音楽は毎日の励みになっています。
これからも末長く良い楽曲とライブを期待しています。

もし、まだLOVEBITESを聴いていない「ロック系昭和おじさん」がいれば、是非、楽曲を何曲か聴いてみてください。きっと刺さりますよw

それでは

(2023.10.14 コンサルタントT)